初夏になり、庭の木々たちは元気に枝をのばし、ハーブたちもいきいきと葉をしげらせて、
花壇の横の通路部分も、みどりで塞がれていまいそう。
足下から自然の暖かみを感じながら、土を踏んで歩く庭。
雑草が小さな花をつけたり、トコトコ歩く虫を眺めたり・・。
クラピア草原の小道はゆるいS字カーブ。
斑入り葉がかわいらしいシルバープリペットの垣根を越えるとハーブの香りを感じる。
シンボルツリーのケヤキからの坂道。木陰の暗がりはいつも気持ちいい風が吹く。
アーチをくぐると明るい日差し。雑木の庭はたくさんの虫たちを呼んでくる。
ニセアカシアの緑はあざやかなライトグリーン。
バラをくるりまわるとピンクの睡蓮池。
ジューンベリーはどんどん枝をのばし、白い小さなアベリアにはミツバチが踊る。
お天気の日は思い切り深呼吸し、雨の日は露で緑を増す葉を眺める・・
こんな庭はなかなかいいものだ。



しかし、困ったこともある。雨の中を歩くと靴が泥だらけ。雨だれが周囲にはねを上げて葉には茶色の点々が。 こんなことから自然にとけ込む小道作りは始まった。






小道づくり

小道作りで泥はねや水はけを考えると、砂利引き、セメント敷きが思いつく。煉瓦張りや石張りはおもむきがあってもコスト高。土を踏む楽しみも考えると選択に悩んでしまう。雑草もはじめはかわいらしく咲いていてもあっという間に大きくなる。小道の雑草は管理も大変だ。


固まる土

土が固まる?土の小道にこだわっている時に絶好の言葉が目についた。土が固まるならこんなにいいことはない。この土は「永土」というネーミングの粉末状のもの。 きれいにならして水をかけるとすぐに固まる魔法のような土だ。実際固まってしまうとセメントにように堅くなるが、オレンジ色の表面は明るい小道にぴったり。庭の中央部はこの「永土」による小道づくりになった。完成した永土を歩いてみるとセメントのように堅くしっかりしているが、どことなくやわらかい土の感触が残っているのが不思議だ。


土留め

小道作りのはじめは道の高さを考える。ポイントに置いたのは木々や花より少し低いところ、雨水を流すのにも都合がいい。とはいえ、低い道には周りから泥が流れ込んでしまう。道の両側に土留めを作ることがはじめの作業になった。庭にたまたまたくさんあった古い煉瓦。これを使わない手はない。明るい日差しの中央部は煉瓦による花壇にまとめる。煉瓦はしっかりとセメントで固定するのではなく、ただ置くだけの状態。

これはレイアウト変更に柔軟で、自然な雰囲気が出ると考えた。時々足が触れてはずれることがあっても自然で簡単がなによりだ。雑木の小道は20cm高のガーデンエッジを使ってみた。正直なところ煉瓦との相性は良いとはいえない。しかし、朽ちてくると自然に溶け込む感じを想像した。 ガーデンエッジは弱そうな薄い物からしっかりとした太い木のものまで様々だ。高さは10cm〜30cmくらいまでのバリエーションがある。今回は中サイズの20cmの物を埋め込んだ。 ガーデンエッジは上からハンマーで叩き込むようなスタイルであることから、そのように施工していたのだが、上部のラインがきれいに揃わずデコボコ状態になってしまった。ある程度土を掘って埋め込んだ方がきれいで早く仕上がることがわかった。土が少ない部分には腐葉土を入れてかさ上げし、花壇のバランスを整えた。


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永土

さて、話は戻り、固まる土「永土」を敷き詰めてみる。まずはどのような仕上がりになるのか不安であったこともあり2〜3mの距離を作り込んだ。永土は強く叩くとすぐに壊せることも利点で、プラン変更にも柔軟である。下から雑草が生えてくることもないそうだ。はじめに小道の雑草を取り除き、表面をきれいにならして小石なども取り除く。不要な材木を使って、永土の施工場所の区切りを用意しておく。簡単に煉瓦などで止めておけば充分だ。永土は20kgの紙製の袋に入っていて簡単に開けることができる。



ザッと永土を施工場所にあけて、セメント用のコテを利用して 表面をならしてゆく。 永土は通常3cm厚で敷き詰め、強度が要求される場合は5cm厚 とのことだが、車の通過に耐えることは難しいようだ。一定の厚みにならすのは なかなか難しく、全体に厚めになってしまう。 水の流れなども考慮しながら表面のカーブを整えてゆく。 表面のならし方で自分好みのスタイルを作れるのも永土の良いところ。

失敗するとそのままの形で固まってしまうので、 表面のならし方にはとても気を遣う。 満足行く表面になったところで水をまくと即座に固まる。 水は比較的多めにかけなければ下の方まで固まってくれない。


シャワーでたっぷり流し込んだところ、表面の永土が流れてしまい模様ができたり、オレンジ色のムラができたりと水掛もコツがいる。はじめは霧状で表面をしめらせるように固め、表面が落ち着いてからシャワーに切り替えて沢山の水をかけるのが良いようだ。水掛直後はまだ表面を修正することもできる。表面がうまく行かなかった時はコテで押すように修正する。固まる時間は30分程度なので修正できるのは5〜10分のあたりになる。今回、用心のために一晩はそのままで寝かしていたが、一度だけ6時間後あたりのところで歩いてしまった。しかし、すでにしっかりとした強度ができていた。(冬場の施工では一晩おいた方が良いようだ)

ある時の水掛中に背後から猫が侵入。しっかりと足跡スタンプがついてしまったがコテで修正。もちろん1つだけ残したことは言うまでもない。永土の小道は所々煉瓦の帯を入れている。アーチの部分はメンテナンス用の開口として煉瓦敷きにし、他の部分は小道のアクセントや水のしみこみ場所として煉瓦の帯をつけている。永土は長い時間で水を吸収するため、水たまりがあっても浸透してくれるのは良いことだ。一部ひび割れも出てしまっている。ひび割れは下の方の永土がうまく固まっていないからのようだ。はじめの頃のシャワー状の水掛で坂道部分に出ている。下の地盤が悪かったのかもしれない。永土が欠けてしまっても上から蒔いて水をかければ補修することもできる。そのため、補修用の永土を多少残している。
こうしてオレンジ色の永土の小道は完成。





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香りへの小道

種々のハーブとクラピア草原の小道。ここはしっかりとした道に仕上げたいが自然の雰囲気も重要。でも少しは気取ってみたい。はじめは枕木での施工を予定していたが、ゆるやかなS字カーブの道になじませるにはハードな素材だ。重くて堅くて簡単に切断ができない。コストも高く入手が難しい。そこで目にとまったのはコンクリート枕木、一見枕木風であり加工も楽でコストも安い。さらに雰囲気にあった素敵なアプローチになるようドイツ煉瓦を組み合わせたデザインにしてみた。クラピアのランナー進入でドイツ煉瓦とクラピアの緑が素敵に馴染むことを頭に描いて・・・

コンクリート枕木とドイツ煉瓦でうまく構成させることはできるか?はじめに10個程度を用意して並べてみる。当初、隙間を大きく取り、クラピアの進入を取り入れる予定でいたが、ハーブ側への侵入を警戒して密に並べることでクラピアのハザードにした。歩き易さもこの方がよい。

S字カーブにコンクリート枕木を馴染ませるため、場所々々で両端を斜めにカットした。カットはダイヤモンドカッターとタガネで比較的容易に行える。コードレスのカッターはフィールドでの作業に威力を発揮した。切断したそれぞれのパーツを並べてみてカーブにうまく馴染むか確認する。


コンクリート枕木と煉瓦を土に埋め込んで固定するため土を掘りこむ。土はコンクリート枕木の2倍位多めに堀込む。煉瓦の方がやや厚みがある。掘った部分にサラサラの土を平らに置きそこにコンクリート枕木と煉瓦をおいていく。一般の作業ではしっかりとした底面を得るために砂を使用するのだろうが、ここでは砂状の土を使用した。コンクリート枕木と煉瓦を置く部分に水糸をはり、高さの目安にしている。高さや傾斜を丁寧に調整する。水の流れを考えて適度な傾斜を作ったり、2枚のコンクリート枕木の中央がやや低く、両側がやや高くなるようにした。これは実際に歩いてみての感触である。

両脇の土はコンクリート枕木と煉瓦より少し低くなるようにする。土の上に板を置いただけではガタガタするので、板に乗り踏み固めながら土を足して高さを安定させる。煉瓦は平面がきれいだが、コンクリート枕木は裏面がデコボコしているため、安定をとるのが一苦労だ。最後、実際に歩いてみて違和感がないかを確認し、女性の足でもスムーズに歩けるよう傾斜や向きを再調整した。


コンクリート枕木と煉瓦の隙間に土を入れて、左右の土の高さを合わせる。 クラピア側には腐葉土を加えて高さを調整した。 最後にコンクリート枕木と煉瓦上に残った土を取りのぞき、 タワシで磨いてよごれを水で流す。



クラピア草原の香りの小道が完成だ。



庭の排水溝

ゲリラ豪雨が頻発する昨今、しっかりした排水を考えないと大きなプールができてしまう。 庭にはいくつかのグレーチングの排水溝がありここに水が流れるよう勾配を考慮している。 グレーチングは豪雨時には威力を発揮してくれるが、どうも蚊の発生源になっているようだ。

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