Wooddeck (ウッドデッキ)


「ウッドデッキを作ってみたい」という長年の念願。 こんな想いからウッドデッキづくりが始まった。 きっかけは十年前の自宅新築時に手にした「ドーパ」という雑誌。 ウッドデッキは日本でお馴染みの縁側を大きくしたようなもの。 無垢の木材をドンと使った大縁側は結構迫力がある。 アメリカの一軒家には必ずといっていいほどウッドデッキが登場する。 木のやすらぎに包まれながら今日の風を感じる。 くつろぎの時間を過ごすには最適の空間といえる。 このページでは初めてのウッドデッキ作りのようすを紹介する。






木材

ウッドデッキ作りはやはり木材の選択からスタートする。基本はSPFと呼ばれる2x4材。安価で加工しやすいが屋外利用では傷みやすい。3回以上の塗装で表面をガードすれば使うことが可能だ。ウッドデッキ作りによく利用される木材で、価格が安く耐久性があり、加工しやすいのがWRC材(ウエスタンレッドシダー)だ。ショップでも初心者向けによく勧められている。ハードウッドと呼ばれる抜群の耐久性を持った木材としてイペ・ウリン・アマゾンジャラなどがある。ショッピングセンターや橋、遊園地、公園など多くの人が利用する場所で使用されるプロ向けの木材。木工用ドリルが折れることもあるような堅くて重いプラスチックのような木材だ。当初、初心者という尻込みからWRC材で計画していたが、ネット上で出会ったサイプレスという木材がとても気になった。サイプレス材はオーストラリアの建築によく利用され、豪州ヒノキと呼ばれている。黄褐色で節目が多く、香りの良い木材だ。ハードウッドの仲間に属し、耐久性、加工性も高く、何といっても木肌の感触がよく、見た目も味がある。
ついつい心を惹かれてサイプレス材で挑戦することに決定した。サイプレス材を入手するには大手の「リーベ」というショップが良いようだったため早速メールで問い合わせを行ったが何日たっても返事が来ない。他にどこか良いショップは無いだろうかとネット検索していると「サイプレスMiyaby 」という木材の名称がショップ名になっているお店を発見。さらに「サイプレスMiyaby 」ではウッドデッキ作りにサイプレス材とアマゾンジャラ材のハイブリッドタイプを設定している。床下の基礎部分には20年を超える耐久性を持つアマゾンジャラを使用し、床面は木肌と香りの良いサイプレス材使用するという、木材の特質を贅沢に利用する設定。この構成で行こうと思い、早速敷地図面とともにメールにて見積もり依頼をすると次の日にはお返事を頂いた。質問点に返答すると設計図付の見積もりとさらに3Dの完成画像(パース)までドンと届いた。こうなるとこちらもまじめに構造を考えなければならない。頂いた設計図をもとに自分なりの設計図を作り再見積もりを頂き、木材を入手する運びとなった。

サイプレスMiyabyさんのホームページ →  http://miyaby.com/


設計

今回のウッドデッキは4200 x 2920mm 12.3u パーゴラ付の仕様だ。
初心者にはアマゾンジャラ+パーゴラというチャレンジ指向が高い構成。
使用する木材は
 基礎部分の束柱 アマゾンジャラ70x70mm
 基礎部分のネタ アマゾンジャラ30x50mm
 床板 サイプレス120x33mm
 幕板 サイプレス115x25mm
 パーゴラ柱 サイプレス90x90mm
 パーゴラ サイプレス115x25mm
基礎のネタは結構細い角材で、木ねじも2本しか打ち込めない。耐久性が不安で質問メールを送ったところ木ねじの打ち方など図解で丁寧に教えて頂いた。アマゾンジャラの強度なら細い角材でも大丈夫とのお返事でまずは安心。今回のウッドデッキでは、エアコンの屋外機をよけなければならないことと、花壇や樹木にぶつかるため、角を切り取る形になっている。

〜製作したウッドデッキ設計図〜


既存の建物と隣接して設置するが、当初建物とは独立した状態を考えていたが、施工時位置出し が容易であることから建物を利用して設置することになった。

〜サイプレスMiyabyさんより頂いた3D完成画像〜


ネタは束柱を挟む構成にして強度を上げている。ネタの上部が床面で、束柱の高さは床面より5mm低い位置にした。ネタは50mm幅のため、木ねじが打てる幅は45mmの範囲になる。

〜ネタと束柱の構成図〜


パーゴラはサイプレス材にするかアマゾンジャラ材にするかという 選択があり、色合いの感じから床材と同じサイプレス材を使用し、 束柱と共有にすることにしたが、ここで大きな問題が発生する。 アマゾンジャラ材の束柱は70x70mm で、サイプレス材の柱は 90x90mmで20mmの違いがある。 横にネタを流すとこの20mmの違いをカバーしなければならない 工夫が必要になる。実際施工時もこの寸法差で位置出しに苦労することとなった。

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整地

設置する位置の地面を平らにして雑草などを取り除く。
植物が1本植えられていたため、これを花壇の方に移動した。



基礎作り

まず、束柱を立てる位置に砕石を敷いてモルタルを水平に流した。本来のスタートは設置位置を明確にするため水糸を張るのが一般と思われるが、2辺を建物に隣接させ、周囲に花壇などがあるため一部にしか水糸を張ることができず、メジャーによる位置出しで基礎を作った。やはり、正確な位置を出すことができずに大幅に位置がずれた部分も出てきてしまった。高さは地面より10cm下がった位置でなるべく水平にモルタルを調整。




束石と束柱の設置

束石は羽子板付束石を使用した。モルタルが固まったところで束石を置いてゆく。メジャーによる位置出しが頼りなので正確に計測して位置を出し水平を調整した。束柱の高さの決定はレーザ墨出し器を利用した。レーザは日中利用できないことから夕方の作業になる。床面の高さは建物のドアの位置(床の位置)を基準に、30mm下がった位置を床面とし、そこから33mm下がったところがネタの高さになり、さらに5mm下を束柱の高さとした。束柱は70x70のアマゾンジャラ材、1つ1つ高さが違うため番号をつけて管理した。束石の水平を取り、束柱が垂直に立つようあらかじめ調整を行った。70x70のアマゾンジャラ材は丸鋸を3回使って切断するため、きれいな面で切断するのが難しい作業である。束柱の設置は行わず、ネタ組と並行して設置することにした。


ネタ組

ネタ組は束柱の設置、束石の水平出しと並行して作業した。まず、建物を利用して一番奥のネタを設置した。建物にレーザをあてて床面より33mm下がった位置を出し、そのラインにはじめのネタを固定した。建物はコンクリート製なので、コンクリート用のネジでネタを固定。建物を利用したため、基準になるネタが比較的簡単に用意できた。さらに中央のネタを束柱に固定してゆく。高さと水平はレーザを利用して決定。

ネタの高さを調整する場合簡単なジャッキを使用し、位置が決定したところでクランプを行う。建物の基礎を調整固定するためのジャッキ型金具が安価に販売されている。レーザが正確に当たるように2つのジャッキを調整するだけなので、一人での水平出しも容易である。レーザでネタの水平を維持しながらネタと束柱の直角を確認し、束石の水平も合わせて調整。束石の水平がとれない場合は、粉のままのモルタルを下に敷いて調整を行う。すべての寸法が正しく組み合わせできた状態で束柱あたり2本の木ねじを打ち込んでゆく。一番外側のネタを組み立てて、合計3本のネタを正確に設置。この3本が基準となるので、その後の作業はだいぶ楽になる。縦方向のネタ受けを2本程度取り付けると、ネタはしっかりと固定されるので、この構成を基準に他のネタをどんどん組み上げる。






床板をちょっと置いてみると完成イメージが見えてくる。
束石の位置が固定されるので、さらにセメントを流し込んでずれないように固定した。
束石の羽子板も5mmのネジで束柱に固定する。


木ねじ打ち

「サイプレスMiyaby」さんではウッドデッキ専用の木ねじ(コーススレッド)を木材に付属してくれる。5.5mm径のしっかりとした木ねじで、ブロンズに表面処理されているので木にマッチする。このねじは若井産業叶サのステンレス製デッキ専用スレンダビスだ。ネジの頭は普通のプラス型ではなく特殊な四角穴になっている。ネジ箱に1つずつ角ビットが入っているので安心だ。 この太い木ねじをハードウッドに打ち込むにはしっかりと下穴をあけなければならない。インパクトドライバは瞬間の回転力が強く設計されているので、木ねじをグイグイ打ち込んでくれる頼もしいツールだが、力が強すぎて首が折れてしまったり、ねじの頭を潰してしまう。4.5mmの金工用ドリルを使用してしっかり奥まで穴をあけることが重要で、穴が浅いとネジの中央ですぐに切れてしまう。しかし、この穴あけは半端ではない。アマゾンジャラ材はドリルがなかなか入って行かず、煙を出して止まってしまう。1cm位進むごとにドリルを抜いて切り粕を除去しながらの作業である。サイプレス材は2cm位までは進む。下穴には木工用の皿もみビットで面取りを行う。今回、数本のネジを切ってしまったが、このような場合、見えるところでは同じ場所に新たなネジを打ち込みたい。ネジは比較的深い位置で切れるので、斜め方向に再度下穴を開けることでもう一度打ち込むことができる。ちょっとした裏技だ。


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パーゴラの柱

パーゴラの柱は束柱と兼用したため、この段階でパーゴラの柱を立てる。柱は90x90角のサイプレス材。柱の垂直はやはりレーザを利用したので、夕方からの作業がメインである。2本の柱は軒下に入るため、軒を利用して金具で固定した。固定できない柱は材木でささえを作り仮固定する。柱の固定は梁を通すことで固定する。梁の高さは床面より計測してL型金具を支えに、クランプを活用して固定し、ネジ止めした。柱が固定されたらネタ部分も固定してゆく。今回ネタは強度を保つために束柱を挟む形で2本通している。ここで問題になるのは束柱とパーゴラ柱のサイズの違いである。2本のネタの距離を90mmにしなければならないので70mmの距離を拡張する形で工夫して固定している。


パーゴラの桟木

パーゴラの桟木は25x115のサイプレス材を使用する。スタイルは一般的なアロースタイルだ。高さがあまり高くならないように50mmの切り込みを作ってはめ込んでる。桟木はおよそ450mm間隔で取り付けた。柱部分は2枚の桟木を挟んで強度を得ている。


木材の塗装

使用する木材はあらかじめ塗装を行ってから取り付けている。アマゾンジャラもサイプレスも風雨に強い木材なので、塗装が無くても20年以上耐えることができるが、紫外線の影響などで表面の色はグレーに変色してしまう。今回はきれいな木の色を保つために塗装を行っている。


使用した塗料は木材の保護用のクリヤー塗料である、オスモカラー#420の外装用クリアプラスである。
オスモのホームページ→http://www.osmo-edel.jp/ 

クリアプラスは1回塗りで充分な皮膜を作ることができる。
アマゾンジャラは塗装によりきれいな赤茶系の色に保たれる。サイプレスは少し黄色がかった色になってしまう。ヒノキ系の木材なので良い香りがするが、塗装により香りが消えてしまうのは残念だ。


照明と電気配線

ウッドデッキの骨組みが完成したところで、じっくり眺めているとデッキ上で何をするかを想像する。一番に頭に浮かぶことはやはり「ビール」だろう。
ビール → 夜 → 暗い → 照明
おつまみ → 焼き肉 → 焼く → コンセント
こんな想像から照明とコンセントを用意しておく必要に気づく。これは予定外の作業だ。風雨に強い照明は屋外用スポット照明器具などが思いつくが、デッキ=マリンライトという定説があるようだ。早速マリンライトを2灯取り寄せて、パーゴラの桟木の間に取り付けることにした。マリンライトは見かけよりも大きく、直径が130mm もある。サイプレスの床材が120mm幅なのでこれを利用して取り付けたが、左右5mmほどはみ出てしまうが目をつぶることにする。配線から雨水が浸入しないように木材の側面から穴開けを行い、配線が露出せずにマリンライトと接続できるようにした。
マリンライトには電球が入っておらずびっくりする。LED電球と思ったが、雰囲気を考えて45Wのハロゲンランプを用意した。白熱球より省エネで充分な輝度がある。スイッチはヒモ付きのスイッチを防水処理して設置した。コンセントはパーゴラの柱に用意した。電気作業は予定外の時間がかかってしまった。
床下収納

プラスチック製の大きな物入れが1つあまっていた。屋外用の物入れなので防水も考慮されている。高さはネタと同じ高さとなれば床下収納に利用できる。基礎部分にコンクリート平板を置いてその上に物入れを設置した。


ステップと靴箱

地面より450mm高の床は1段のステップを必要とする。南側のステップは600mm×500mmの大きさで、サイプレス材を利用して製作する。ステップは33mmのサイプレス材で重みも充分なため、床板を固定せずに蓋のような構造にして内部が利用できるようになっている。ステップの横には約1m幅の靴箱を用意した。雨の日には作業靴が濡れてしまうことが多く、床下スペースに屋根付きの靴箱を組み込んだ。屋根は養生用のプラスチック板を使用した。


ステップ その2

西側のステップはデッキの延長のような大きなステップを考えた。奥行き600mm、幅1500mmのサイズがあり、一人がゆっくりとくつろげる大きさがある。


床張り

いよいよ最後の仕上げである床張りだ。床下部分を整地して泥はねをおさえるために砂利を引いた。床張りは、板を並行に並べてゆくことと、一定の隙間をとることがポイントである。また、板を縦に切断することなく納めようと、隙間をうまく調節することにした。隙間は一般に3〜5mm程度。まれに8mm位の隙間を取っていることもあるが、鉛筆を落としても下まで落ちない程度の隙間がよい。120mm幅の板がうまく収まるように計算してみる。
デッキの全長をL、隙間をd、板の枚数をn、板の幅は120mmとした時
 L=(120+d)×(n−1)+120 → d=((L−120)÷(n−1))−120の関係になる。
今回全長は4170mmであることから33枚の場合は隙間6.56mm、34枚の場合は隙間2.72mmという値になった。6.56mmの隙間を選択してスタートした。1枚、2枚と張ってゆくうちに床板が大きくカーブしている材にあたってしまった。隙間の調整が必要だ。さらに3枚、4枚と張ってゆくと累積の距離が計算通りにならない。板の幅をはかってみると、それぞれ若干の差があり1mm近いばらつきがあるようだ。平均の板幅は119.5mm と判明した。0.5mmでも33枚もあると誤差が16.5mmも出てしまう。この段階で予定を変更し、34枚の板数として約3mmの隙間で進めることにした。隙間が約3mm としたのは、累積の距離がうまくあうように隙間の幅を調整するように方針を変えたからだ。板幅の誤差や、板の湾曲、たわみなどでずれが生じてくるため、一定の隙間では誤差が累積してしまうことになる。また、デッキ全体の寸法4170mm も左右で約10mmのずれがあり、これを隙間で吸収する必要もあるようだ。
各床板の累積距離をEXCELを利用して計算した。(EXCELのファイルはこちらから)
床板を6割程度張ったところで全体の床板を置いてみて収まり具合を確認した。最後の床板で調整するよりパーゴラの柱の位置で調整することとして、今度は逆側より張り出し、すべての板を完了した。板の隙間は一定とは言えず、床板の誤差と格闘する作業になったが、床板を切断することなくうまく納めることができた。

床張りには2つの治具を用意した。隙間出し用の治具とネジ位置出しの治具である。隙間は調整しながら少しずつ変化するため、いくつかの厚みの治具を組み合わせて使用した。

ネジ位置出しの治具はネタにはめこむとネジ位置が得られる金具で、これは大変重宝した。


幕板の取り付け

幕板を取り付けるのが最後の作業だ。幕板をつけた方がデッキのスタイルが優雅になるが、切りっぱなしの床板が露出するのも悪くない。今回は幕板を用意して頂いたことから取り付けることとした。デッキ側面よりはみ出した床板を丸鋸で切断する。傾斜部分の切断は位置がわからずネタもわずかに切り込んでしまう。25mm厚のサイプレス材を束柱のサイズで切断して55mmのネジで固定する。傾斜部分は幕板を45°でカットする。きれいなラインが完成した。


長いす

デッキの設置場所にはもともとの住民であるエアコンの屋外機がある。通風を確保しながら上部を椅子として利用することが当初からの計画である。座りやすい450mm高の高さで幅1300mm、奥行き600mmのサイズである。余っていたサイプレスの角材を足に利用して床板を載せることで簡単に作った。夏場はエアコンの強力な熱風で、椅子として利用するにはきびしそうだ。


物入れ+長いす

昔のキャンプの経験から、屋外で過ごすにはいろいろな道具が登場する。日よけのタープや椅子などは定番だろう。これらを一気に収納してくれる物入れ+ベンチを製作した。幅1300mm、奥行き600mmのサイズで高さを550mm とした。この高さは椅子の収納を考慮したことによるが、座ると足が浮いてしまうのが欠点だ。雨があたっても良いように周囲を囲うボックススタイルになっている。隙間からの多少の水の浸入はしかたがない。上面は33mmのサイプレス材で大変重いため、開閉式のフタにするのが難しく、前後2つのフタで開閉するスタイルにした。


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